本のない人生なんて!

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独身会社員にもぐっとくる『LEAN IN』〜シェリル・サンドバーグ〜

今更ながらの「LEAN IN」

ほんとに、今更なのですが、シェリル・サンドバーグの「LEAN IN」を読了。

 

シェリル・サンドバーグは、FacebookのCOO(最高執行責任者)としてIT業界の実力者であり、米Yahoo!マリッサ・メイヤーと同じく、世界でも有力、破格の成功を治めている女性の1人です。

 

その彼女が、本書では、「女性」が「社会的に成功して影響力を持つ」過程で直面する様々な壁に対する具体的な乗り越え方を伝授してくれます。

そしてなによりもキャリアを着実に築いてきた女性たちがそのキャリアを中断あるいはフェイドアウトしてしまう「母親」という役割を担った人たちに対して、彼女の経験を素にエールと具体的な指針を示してくれます。

 

しかも、この本は後ろのページから見ても分かる通り、一般書でありながら、大量の参考文献に基づいた研究成果を反映させています。

巷のビジネス書のように著者1人の時には独りよがりの「経験談」ではなく、女性が社会で活躍する(あるいはそれを阻む要因)先行研究について知りたい人に対しても、十分にその根拠を示しながら語っています。

 

彼女の経験(ときには失敗談)が終始ユーモアに書かれながら、先行研究に裏打ちされた内容は、まさに良書ですね。  

 

「同じテーブルに着きなさい」は女性への大きな後押し 

女性で仕事で成功したいと考えているあなたなら一度は感じたことはないでしょうか。

「男性には配慮しないとうまく仕事をこなせない」と。 

特に、キャリアを積みたい女性にとって、男性優位の仕事場において、男性を立てながら仕事をすることは、一種の処世術のようになっていると思います。

金融業界に勤めていたせいか、この傾向は顕著でした。

男性同僚が先に会議のテーブルについていれば、より下座に座る、テーブルに付く席がなければ、後ろに下がって座るなど。

しかし、この本の中でシェリルはわざわざこれを、「同じテーブルに着きなさい」と章立てをして論じています。

 具体的な事例として、

フェイスブック社に財務長官を交えて会議を行った際のことを揚げています。

財務長官と同じテーブルを囲む15名の男性スタッフに対して4名の女性スタッフは部屋の片隅に座ったまま。

シェリルが同じテーブルに着くように促しても、女性たちは着席したまま動かない。

会議後、彼女は4人の女性に「誘われなくてもテーブルに着くべきだった。全員のまえで麾かれたときには迷わず会議に参加すべきだった」と伝えました。

あれは、重要な転換点だった。あのとき私は、女性の内なる障壁がどれほど行動を変えてしまうかを目の当たりにした。そして、女性は制度的な障壁だけでなく、内なる障壁とも戦わなければならないと気づいたのだった。

 

女性が仕事でキャリアを積みたい、満足する仕事をしたいと考えるならば、この点はまさに重要と言えるでしょう。チャンスを掴むためにも、自分の意見を発していくことが必要で、そのためには、まずは同じテーブルにつくべきです。

 

「女性の敵は女性である」は刺さるメッセージ

今、私の職場には、新卒で入ってきた女性社員がいます。彼女はとても優秀ですが、一方で社会人としての基本的な「報告相談する」「時間を護る」「円滑なコミュニケーションをとる」といったことに課題があります。

 

育成の方針としても「できないことがあることを分からせる」ことにしています。

その育成の中心に私もいます。

年が10以上違う彼女に対して思うのです。

「これは彼女に対する正当な評価なのか。それとも若い彼女に対しての自分の嫉妬なのだろうか」と考えることがあります。 

シェリルはこの点にも触れています。

女性が上をめざすとき、立ちはだかる障害の一つがすでに上にいる女性だったということがある。これは悲しいことだが、事実である。 

 

国務長官のマデリン・オルブライトは「地獄には、女を助けない女が落ちる場所がある」と言った。女性のこうした行為は、単に相手を苦しめるだけでは済まない。

女性に対する女性の辛辣な評価は客観的とみなされ、男性による評価より信用できるとみなされがちである。言い換えれば、助成によるジェンダーバイバスは正当なものとみなされる傾向がある。女性が女性に対してバイアスを持っているはずがない、というわけだ。だが、そうとは限らない。女性は多くの場合そうと気づかないまま、女性を軽視する風潮を自分の中に取り込み、無意識に態度に表している。だから女性は性差別の犠牲者であると同時に、加害者にもなり得る。

 自戒を込めて「女性は女性に対してバイアスを持つものである」ことを胸に刻んで彼女に接しようと思うのです。

まとめ

思えば、「キャリアウーマン」という言葉も、「キャリアを積む女性」が当たり前ではないからこそ、出てきた言葉。

この本を読み終わった今でも尚、本ブログのタイトルにも「女性」と入れたい衝動と葛藤する自分がいます。

これからは「女性」と「男性」という二元で性を論じる時代ではなくなってくるのでしょう。

いつの時代も、偏見を変えてきたのは当時の「常識」と思われた差別に対抗してきた先人たちのおかげでした。

自分自身も小さくても、少しずつでもより平等で誰もが生きやすい社会の実現に貢献したい、そう思った1冊でした。

これは母親のためだけの、女性のためだけの本ではありません。まさに「より平等で行きやすい社会を実現したい全ての人のための本」です。

 

 

LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲
 

 文庫版